抗酸化作用のある食べ物や栄養素を良く聞くようになりました。活性酸素という言葉にはあまりいいイメージを持たれていないかもしれません。身体の酸化を促して、細胞の老化やシワの原因になる、こんな印象があるのではないでしょうか。それは間違えではないのですが、それ自体は活性酸素の1つの作用です。そのあたりのことから、活性酸素に対しての取り組み方を書いてみようと思います。

活性酸素って何?

生きている以上は、酸素を取り込まなくてはならないですね。そして活性酸素は酸素を体に取り込んでエネルギーを取り出す以上、どうしても発生していくものです。自然に生活している中で、取り込んだ酸素のうち1~3%は活性酸素となります。そもそも活性酸素は、酸化能力が極めて強い酸素の事です。この強力な酸化能力で身体に入ってきた異物(バイ菌や細菌)に対抗する免疫機構で重要な役割を果たしています

しかし、身体にとって有益な活性酸素も過剰に作り出されることで身体にとって有害なものになります。

活性酸素を過剰に作り出してしまう要因

ストレス、紫外線、喫煙、過度の飲酒、激しい運動などがその要因です。

ストレス

ストレスを過度に受けることで身体はその緩和のために「副腎皮質ホルモン」というホルモンを分泌しますが、この時に活性酸素も作り出されてしまいます(副産物のようなものです)。

紫外線

紫外線が皮膚に直接あたることで皮膚を構成してる細胞に活性酸素が作り出されてしまいます。この影響で皮膚の脂質部分が酸化され、シミやシワの原因になっていきます。

喫煙

煙草に含まれているタール、ニコチンなどの有害物質が細胞内に活性酸素を過剰に作り出す事が分かっていますし、喫煙によってビタミンCが失われることで、抗酸化作用のあるビタミンCも不足してしまいます。

激しい運動

運動をすることで日常生活以上に酸素を必要とする事となり、特に息が切れるような激しい運動は活性酸素を大量に作り出してしまいます。しかし、息が切れるような激しい運動、つまり無酸素運動に近い強度に関しては当てはまりますが、会話をする余裕のある程度の強度で行う有酸素運動(ジョギングなど)は活性酸素も日常生活レベルよりは多く生みだされるでしょうが、健康を害するレベルではない事も言われています。また、ミトコンドリア(後ほど書きます)を新たに作り出していき酸素の活用量は増えますし、適度な有酸素運動は活性酸素を無害化する酵素(スーパーオキサイドジスムターゼ)を活性化する事も分かってきています。一概に、運動は身体に悪いと決めつけるのは早計ですが、運動の負荷は考えていく方が良いでしょう。

この他にも、大食や睡眠不足、大気汚染による汚染物質の吸入など様々な事が引き金となって活性酸素を日常生活レベル以上に体内に発生させてしまいます。この過剰な活性酸素に対して、抗酸化作用がある食べ物や栄養素を摂取していくことが望まれてきているという事になります。

抗酸化作用

抗酸化作用のある物質としては、植物性食品に含まれるフィトケミカル、ビタミン(A,C,E)、aリポ酸、CoQ10(コエンザイムQ10)等があります。ちなみに、フィトケミカルはβカロテン、リコピン、ルテイン、アスタキサンチンなどのカロテノイド、アントシアニン、カテキン、イソフラボン、ケルセチンなどのポリフェノールに分かれます。

これらを多く含み抗酸化作用が見込める食べ物に、以下の様なものがあります。

・バナナ:アミノ酸、ビタミン類、食物繊維が豊富。

・キャベツ:特に新キャベツ。

・緑黄色野菜:カロテンを多く含みます。またトマトにはリコピン、ナスにはアントシアニンが含まれています。

・大豆:イソフラボンを含んでいます。

・香味野菜:ニンニクや生姜、ネギやセロリにはアリシンが多く含まれます。

・アボカド:ビタミンC,Eが豊富に含まれています。

その他、ポリフェノールを含む緑茶など、抗酸化作用のある食べ物は意外に多いです。これらをバランスよく食べることは大切なことです。しかし、これだけでは不足で、これら抗酸化物質をより効率良く働かせるために、セレンや亜鉛を同時に摂っていくことが大切になります。

過剰な活性酸素がもたらす身体の酸化を抗酸化作用のある食べ物で抑えていく、サプリメントで効率的にそれらを摂取していく、もちろんこれはこれで対策として良いのですが、1点だけ注意する点があります。それが先ほど激しい運動のところで書いたミトコンドリアとの関係です。

ミトコンドリア

生物の授業で細胞の事を勉強したことを思い出していただくと、細胞には様々な器官がありました。その中にミトコンドリアという細胞小器官があります。これは簡単に書くと取り込んだ酸素とビタミン(特にB)を使いながらエネルギー源であるATPというものを作り出している場所、エネルギーの工場です。

人によって1つの細胞に含まれているミトコンドリアの数は様々ですが、運動習慣があまりない方でしたら、細胞あたりに500個程のミトコンドリアがあると言われています(ちなみにアスリートは3000個程です)。平均してみると人間は60兆の細胞でできているので、60兆×500個がその人のエネルギー工場の数で、グルコース1mol(mol:モル、化学的な単位です)から作られるATPは38個と決まっていますので、おのずとその人のエネルギー源の量が決まってきます。細胞の数や作り出されるATPの数は決まっていますので、エネルギーをたくさん欲しているのであれば後はミトコンドリアという工場をたくさん持つことで絶対量は増えていきます。持久力や体力を上げたいのであればミトコンドリアを増やせばいいのですが、その方法は「細胞を飢餓状態にする」という事です。例えば筋肉を使い続ければ筋肉内のATPが減っていきます。この状態が進むと細胞はより多くのATPがほしいので、ミトコンドリアを増やす事となります。また有酸素運動はミトコンドリアの体積を増す事が分かってきています。

細かいことはともかく、ミトコンドリアは活動の為のエネルギーを酸素やビタミンを使い作り出す工場で、細胞1つあたりに数百から数千くらいある事、その数によって体力は決まってくるという事をまずは分かってください。

ミトコンドリアは別の生命体がヒトに入りこんできた

もう少しミトコンドリアについて書くと、大昔、ヒトを初め、細胞に核を持っている生物がもともと存在していたところにミトコンドリアを持つ細胞の様なものが入りこんできた事によって、それまで活動が制限されていた生物がエネルギー工場を得たことで飛躍的に活動の範囲や進化が進んだと考えれられています。つまりミトコンドリアはもともとは別の生命体だったという事です。それを裏付けるものに遺伝子の構造があります。通常は二重らせん構造という遺伝子を持っているのですが、ミトコンドリアは環状らせん構造という全く違う形の遺伝子を持っています。

二重らせん構造と環状らせん構造

ミトコンドリアはこうして細胞の中に居住スペースを確保する代わりに酸素をつかってエネルギーを作り出していくことで共存を図りました。共存していくうちに1つの細胞に完全に取り込まれたのですが、このミトコンドリアの状態が生物そのものの健康状態にも影響を与えるようになりました。まだまだわかっていないことの多いものですが、ミトコンドリア病というものも言葉としては出てきています。

ミトコンドリアと活性酸素

先ほども書いたようにミトコンドリアは酸素を使ってエネルギー源を作っています。この過程でどうしても出てきてしまうのが活性酸素です。日常レベルであればそれでも身体の中で処理できる量ですし、活性酸素によって外部からの異物に抵抗もできる状態ですが、様々な要因で活性酸素が過度に作られた際に有害物質になってしまいます。

また、活性酸素を作り出してしまうミトコンドリア自体が劣化することで、負の副産物として過剰な活性酸素が生み出されます。細胞がその劣化や損傷度合いで自ら死を選ぶことをアポトーシスといいますが、ミトコンドリアがその担い手である事が分かり始めています。活性酸素を大量に作り出しながらエネルギーを作るミトコンドリアという工場は新しい、効率の良い工場に変わらなくてはなりません。通常であれば活性酸素が大量に出始めたことで古くなった工場は潰し(アポトーシス)、新しい工場を作る事になります

しかし、もし、抗酸化物質を身体の老化予防のため摂った結果として活性酸素を抑える事をしたら短絡的にはもちろん有用かもしれません、しかし、本来新しい工場を作り出すシグナルとして過剰な活性酸素が抗酸化作用で封じ込めれらたら、効率の良くないミトコンドリアという工場は、自らを取り壊し、新しいミトコンドリアを作り直すきっかけを失います

結果、活性酸素を大量に発生させながらエネルギーを作り出す劣化したミトコンドリアが増えるきっかけを作る事になります。

やみくもに、老化防止、活性酸素の抑制を目的に抗酸化物質を食べ物やサプリメントで摂る前に、ミトコンドリアが正常に働ける環境を整えてあげなくてはいけません。もちろん特殊な方法がとられるかもしれませんが、一般的に出来ることは、適度な運動によってミトコンドリアが作ってくれたATPを消費して、ミトコンドリアの量や体積を増やすことも1つの方法かもしれません。

まとめ

非常に難解なものを書いてしまったかもしれませんが、活性酸素は日常生活レベルではあまり神経質にならなくても体内での処理が可能である事。しかしながら、最近の生活環境は活性酸素を大量に作り出してしまう恐れがあり、的確な抗酸化作用を食べ物やサプリから摂る必要も出てきているが、単に活性酸素を抑制するだけではなく、それを作り出しているミトコンドリアにも着目し、過剰な活性酸素がミトコンドリアの新陳代謝にはシグナルとして働いているために、むやみやたらと抗酸化だけを考えても片手落ちになってしまうという事がなんとなく理解していただけると良いと思います。