最近、アレルギー疾患をわずらう患者さんが増えてきているように感じます。もしかしたら、医学的な所見や診察基準によって今まで疾患として扱われなかった分が増えているのかもしれませんが、確実に免疫にかかわる疾患は目にする機会が増えました。

様々な要因がそこにはあるのですが、今回は胎便というものに着目してみました。

胎便

胎便は、赤ちゃんが生まれて初めてする便の事です。黒くタール状になっており、少しだけ緑がかっているという色なのですが、そもそも赤ちゃんは食事をしているわけではないですからいわゆる普通の便とは違い、お母さんの体内にいる時に溜まってしまったものです。

赤ちゃんは体内にいる時お母さんのお腹で羊水に浮かんでいます。胎児はおよそ20週目から羊水に尿を排泄します。尿や身体の表面から剥がれる様々な組織が混じっている羊水を飲んだり、その他、お母さんから提供される血液で不要なものを身体に取り込んでいる状態です。胎児の腸では、そのような不純物を濾過していく作用として腸があり、その腸の壁を作っている絨毛と呼ばれる部分には、不純物が堆積していきます。基本的に、胎児は便をする事がありません(基本的に、なので万一羊水内で排便をしてしまいそれが胎児の口から入ると病的な状態に陥ります)。この腸に堆積した不純物が、胎便の正体となります。

胎便の排泄

多くの場合、生まれてから12時間から24時間以内には胎便は排泄されます。

しかし、この排泄に関しては諸説あります。胎便をしっかりと排泄してから初乳をあげるべきであるという考え方があります。本来、不純物の塊である胎便を出す前に、初乳を飲ませることで、初乳の吸収を優先させ、結果として胎便を完全に排泄できなくなるという説。これとは逆に初乳には胎便を排泄させる作用があるので積極的に飲ませるべきだという説もあります。

もともと、生まれたての赤ちゃんは3日間ほど飲まず食わずでも生きていけるだけのエネルギーを持っています。初乳をあげる事を1日待つ、その間に胎便を出していくという事は赤ちゃんの体力的には可能なことです。およそ、5回ほど胎便が出ると大半の胎便は排泄されたと思っていいようです。量は個人差はありますが、場合によっては300gに達する事もあります。

しかし、最近では病院での授乳管理等の点で胎便管理が難しくなっているのも実情です。さかのぼれば江戸時代には「まくり」と言われる漢方を胎便排泄の為に新生児に飲ませていました。今では「まくり」を脱脂綿に含ませ、それを赤ちゃんに飲ませ、胎便を排泄させるという方法もあります。この方法に関しては担当されている医師、そして漢方医にしっかり相談してから服用させることが重要です。

もしくは、新生児の右側の肋骨の下に手を当て、ほんの少し圧を加えて手指が肋骨の下に軽く入るような気持ちで押して上げます。

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ここは、腹部第五調律点というポイントで、主に肝臓の機能に影響を与え、肝の解毒作用と栄養吸収の両面に関係するとされています。体内の毒素を出すための排泄を促す点でもあり、生まれたばかりの子供のお腹を優しく手の指を親指以外4本をまとめて面にしてゆっくり押してあげることで胎便の排泄を促せると言われています。

初乳を飲ませるませに少し時間をおいて胎便を排泄させるか、それとも、初乳を飲ませて胎便を排泄させるか、もしくは優しくお腹のポイントを刺激して胎便を排泄させるか、漢方を使うか、その時の状況で許されるもので行っていただくとして、やはり新生児にとって胎便を排泄させるという事は重要なことです。

胎便がもたらす疾患

そもそも、胎便を排泄しない事でどの様な症状につながるのでしょうか。主に言われているのは、

・頑固な夜泣き

・熱性の痙攣、ひきつけ

・アトピー性皮膚炎

・アレルギー疾患

・突発性発疹

・新生児黄疸

等です。実際にこれが現代医学的にどこまで科学的な根拠に基づいているかは分かりません。胎便を排泄すればこれらが起きないかと言われれば、必ずとも当てはまらないでしょう。しかし、最初に書いたように、最近はアレルギー疾患が多くなり、それは化学物質などの多用によるものなど外的な要素も多いですが、もともと胎児の時期から溜めていた不純物をかかえた腸がしっかりと働かない事で、腸内環境を悪化させ、これらの疾患を増やしているかもしれません。もし、できることならばこれらからすこしでも遠ざかる為に、胎便を排泄させる事をお勧めいたします。

胎便と胎毒

身体にたまった毒を出す、デトックスという言葉は今や一般的です。胎児の時に、羊水や母親の血液によって様々な老廃物を胎便として溜め、胎便を出すことは、新生児にとっては一種のデトックスかもしれません。

この胎便と胎毒を書くと更に時間が必要で一定の見解を書くに至らないのが実際です。つまり、「胎便=胎毒」なのか、それとも「胎便≠胎毒」なのか、この点は専門に研究している方に譲ります。

おおよそは、中国においては胎毒は1700年代に書かれた「幼幼集成」においては「妊娠中、自分の嗜好のおもむくまま、辛い物や熱い物、甘い物や脂っこく味の濃い物を食べたり、生活リズムの乱れがあると、胎児の毒、胎毒となり、また、生まれた後も母親の怒悲思などの感情の起伏が新生児の病気となる。胎毒とは幼児の痒み、湿疹を示すもの」として、妊娠中の母親の養生の重要性と、胎毒とはいわゆる小児湿疹に該当するという見解を示しています。つまり、ここでは「胎毒≠胎便」という事です。

しかし、日本においては江戸時代には「胎便=胎毒」という立場をとる文献が多く存在します(「小児養生録」や「女重宝記」「小児必用記」)、しかしこれも時代と共に違うという立場のものも現れています。

初乳を与えるのも、胎便を出した後に飲ませるべきとする文献もあれば、初乳に下剤としての効果をみて、胎便の排泄を促すものとして、最初に飲ませるべきという文献もあります。

混乱をきたしてしまうのですが、共通していることは、胎便であれ、胎毒であれ、小児の病気の原因となるものというとらえ方です。病気も「湿疹などに限定」する考え方から「万病のもと」ととらえるものまでありますが、いずれも排泄することが望ましいという見解ではあります。

まとめ

現代社会におけるアレルギー疾患の一因は、もしかしたら胎便を上手に排泄できていない事によるものかもしれません。それは母親からの毒ととらえるのか、別の要因として、羊水に浮かんでいる胎児の尿や剥がれ落ちた組織片が堆積したものと見るかは個々の考え方で良いと思います。いずれにせよ、胎便の排泄方法は「生まれて1日、2日の断食的な状況で胎便を排泄する」「初乳を与えることで、胎便の排泄を促す」「腹部第五調律点というポイントに手を当てて、排便を促す」「漢方を使う」など様々あり、母子を取り巻くその時の環境に合わせて、積極的に胎便を排泄させることで、小児湿疹、現代的にアトピー性皮膚炎、アレルギー疾患へのリスクを最小限にする事が可能になるかもしれない、その点で、胎便をしっかり排泄することの優先順位を上げておく方が、良いのではないでしょうか。そして、妊婦さんの健康状態(食生活や生活パターン)も胎毒に影響を与えうるものなので、いつも以上に健康に注意を払う事が大事だという事も付け加えさせていただきます。