梅雨に入り、これが終われば本格的な夏到来です。

この夏の時期に子供がかかりやすい夏風邪が3つあります。今日はそれを比較し、東洋医学的にはどの様な事を注意すべきか、その養生法などを書いてみようと思います。

夏風邪(手足口病、ヘルパンギーナ、プール熱)

夏風邪3兄弟とも言えるのが、この手足口病、ヘルパンギーナ、プール熱です。これらの比較は以下の様になります。

夏風邪

これらは、おおよそ5歳くらいまでの小児がかかりやすいものですが、大人でも疲れなどで免疫力が低下していればかかります

今年はすでに手足口病の流行が危惧されていますが、これらの夏風邪には治療薬がないという事が共通してます(もともと、風邪の治療薬もありませんが)。かかってしまったら、それぞれに対して、対処療法をするしかありません。どれも辛い事は辛いと思いますが、特にヘルパンギーナは、口の中に出来た水疱と潰瘍が飲食を困難にしてしまい、脱水状態になりやすいので、注意が必要です。

また、どれもウイルスによるものですが、1種類のウイルスならばともかく、エンテロウイルス属のウイルスもいくつも種類があります。これによって、その年に1度かかったら身体が抗体をつくり防御してくれるわけではなく(インフルエンザの場合基本的に何度もかからないのは、その年に流行している型が決まっているからです)、別の同種のウイルスに感染したらまたこれらの夏風邪を引いてしまう危険性があるという事です。

そこでどれも、感染経路は飛沫、接触ですので、まずは基本の手洗い、うがい、マスクなどが予防になります。また、小さなお子様でまだオムツが取れていない場合、オムツ交換の際に手についたウイルスが感染源になる事も十分ありますので、しっかりと手洗いを忘れないように心がけてください

夏風邪と東洋医学

五行

相性相克

上の2つのイラストと表は東洋医学における五行説に基づいてその一部を示しているものです。今回のこの図で分かっていただきたいのは、夏という季節は「火」に属して、そこには五臓では心、滋養する味は苦み、そして、この季節に多い邪気は熱であるという事です。

夏風邪はこの「」または「」の邪気が身体に入りこんで起きるという事です。ここが冬の風邪と大きく異なります。冬は「寒」の邪気が入りこむことで起きます。必然的に、風邪の為といっても夏風邪のとらえ方は温病といわれるものの1種ということになります。この温病も様々なものがあるのですが、今回は夏の風邪ですので、そこにフォーカスします。

暑熱の邪

夏に暑熱の邪気によって発症する温病を「暑温」といいます。これにはいくつかの特徴があります。

・燃え上がる性質をもつので、勢いが強く、人体に入りこんだ後、中焦(イメージは胃腸と思ってください。)と言われるおよそ横隔膜から鼡徑部までの間に熱が溜まり、気の流れを阻害してしまう性質を持っています。これは高熱、大汗、顔面の紅潮、動悸、口の渇きなどを引き起こします。また、「夏暑は陽明より発す」という言葉がありますが、この陽明は「胃」と「大腸」です。つまり消化系統や便通異常も起こしやすいとなります。

・津、気を損傷しやすいという特徴もあります。これはきわめて東洋医学的な言葉ですが、言い換えれば熱の邪気ですので、津つまり体内の水分に影響を与えて急激に発散させて水分を不足させてしまいます。そして汗などで大量の水分が出るに伴って身体の気(エネルギー)も身体から出てしまいます

湿邪と合わさり症状を出しやすい。これは夏は熱によって大地の水分の蒸発によって下から、湿気がでてきやすく、暑熱と合わさって暑湿の邪気となり身体に影響を与えるという事になります。湿を嫌い、悪い影響を受けるのは脾という臓器なので夏は脾の調子も関係するという事になります。

まとめますと、暑熱の邪気は夏の湿気と相まって暑湿の邪気が身体に影響をあたえ、それは急激な身体の変化をもたらし、胃腸の負担と身体の水分不足を生んでしまう。という感じです。

対策

西洋医学では先ほども書いたように対処療法という事になります。症状が治まることは身体にとっても楽ですし、それには十分意味があります。しかし、夏の特徴をとらえ、東洋医学的な対策もしておくことは予防の観点でもプラスとなります。ちなみに、鍼灸の施術では「清暑化湿法」という治方が用いられ、主に胃、大腸、脾という臓腑の経絡のツボを使い鬱滞している身体の熱を取り除く方法がベースとなります。しかし、これはご自身で出来るわけではないので、脈や舌、お腹をしっかりと診てくれる鍼灸師にお願いする方がいいと思います。

養生法

もともと、最初に挙げたお子様のかかりやすい夏風邪三兄弟の原因ウイルスはどこにでも存在しているもので、特別強いというものではありません。しかし、夏の暑さや湿気に身体が弱まっていることで容易に感染し、広まります。そこで、夏の養生法を実施して、上手に夏の暑さとつきあえることが大事になります。

夏は蕃秀、茂り盛んである事を「蕃」、華やかで美しい事を「秀」と言います。夏は天と地の気が混じり、全てのものが栄え、実る季節です。夏は陽気が最も盛んになりますが、おっくうがらずに身体の中にたまった陽気を適度な運動で汗をかいて発散させてください。身体に余計な陽気が溜まると心や肺に影響を与えます。一日のリズムは、暗くなると同時に寝て、日の出とともに起きる事を心がけるようにというのが古典にはあります。なかなか睡眠のリズムは難しかもしれませんが、日の出とともにおき、余り日中の日差しの強い時の運動を朝早くにすることでこの養生法を試してみるといいかもしれません。

食事

「心は暑を悪(い)む、脾は湿を悪(い)む」という言葉があります。夏風邪は「暑湿の邪」が影響している事が多いので、これを養生する食事は心と脾を強くしておくものがいいと思います。心は苦味に、脾は甘味に滋養されますので、心に関しては先ほどの五行説と合わせ、赤い色で苦みとなると、赤ピーマンや赤パプリカ、苦みではゴーヤなど夏に旬を迎える食材はやはり適しています。また、脾は瓜類の食べ物や小豆、黒豆、空豆、緑豆、ハト麦、サクランボなどは適していると思います。

これらを取り入れつつ、

・身体にたまった余計な熱をとるもの(清熱)

ハト麦、小豆、緑豆、豆腐、キュウリ、ゴーヤ、ナス、レタス、セロリ、人参、キウイ、パイナップル、スイカなど

・汗で身体からでた身体に必要な水分を作るもの

トマト、梨、リンゴ、もも、レモン、梅、ハム、牛乳、酒粕など

・汗と共に身体から出て行った気を補うもの

もち米、トウモロコシ、豆類、生姜、ネギ、ニンニク、かぼちゃ、シイタケ、山芋、もも、サクランボ、ブドウ、肉類、シャケ、アナゴなど

・身体にたまった余計な水分を排出するもの(利水、去湿)

豆類、瓜類、トウモロコシ(特にヒゲの部分)、サクランボ、鱧(はも)など

このような食材を使いながら、身体の中に余分な熱と湿気を溜めずに胃腸を健やかにしておく事が、夏風邪予防には有効と思います

普段からチェックしておくと変化が分かること

今回の夏風邪はお子さんに多く感染が広がりやすです。その中でまだ、うまく言葉が使えない子の状態を把握する方法があります。前回のブログで書いた「虎口三関の脈」と「舌診」です。

虎口三関の脈

前回も書いているので重複しますが、子供の人差し指に現れる血管の状態を診る方法です。

虎口三関の脈

男の子は左の人差し指、女の子は右の人差し指でみます。病気や体調不良の際に図の部分の血管の位置や色で身体の状態を把握する方法ですが、色はいいので、とりあえず血管が風関まで伸びているのか、気関かまたは命関かで病の進行を把握しておく、血管が長いほど病の根は深く進行しているので治りづらいという事を思っておくといいと思います。

舌診

普段から子供の舌を見ておくことがいいのですが、元気な時は舌の形状も張りがあり、色つやも綺麗です。また舌の上にある薄く白い部分、これを舌苔(ぜったい)と言いますが、これが薄く白く潤っている状態が健康です。この舌診も種類がありすぎて、全てここにかけませんが、手足口病、ヘルパンギーナ、プール熱においては多くの場合、健康な舌に比べて、舌の色は濃い紅色で舌の形状もどことなくボテっとした状態。そして、舌苔も厚みのある少し濃いめの白いもの、場合によっては少し黄色みがかっている事があります。

なにも舌で子供の状態を把握してくださいという事ではなく、ただ、いつもと違うと感じてもらうだけで十分です。それにはいつも見ておかなくてはならないので、健康で元気な時の舌を覚えておくと、そこに見る感じで変化している時は身体の調子が悪いのかもという気持ちになってくれると、病気も初期に対応できると思います。

結語

今回は夏風邪を比較し、それを温病、暑湿の邪の侵襲など東洋医学的に考えてみました。夏風邪自体は西洋医学お薬では対処療法しかありませんが、東洋医学は病の本質を見てそれを整えることが出来ます。ただし、西洋、東洋問わず、結局患者さんの体力が鍵になりますし、その養生法は生活リズムや食べ物で少ないながら提案させていただきました。

まずはこれからの時期に向けてしっかりご自身の疲労や身体をケアして感染を予防して下さる事が何よりですので、しっかりとその日の疲れを引きずらないようにしてください。