暑い日が続き、水分の補給も大事な熱中症対策になっています。今回は熱中症と水分補給について書いてみます。

熱中症・熱射病・日射病

以前は、熱中症という言葉よりも、熱射病日射病という言葉が一般的でした。しかし、熱中症という言葉が今では当たり前になっています。日本の場合は厚生労働省が平成8年5月に「熱中症の予防について」という公文書を出したので、今からおよそ20年前という事になります。

熱中症は、暑さの厳しい環境のもとで起きる身体の変調を総称しています。

それに対して熱射病は多くの場合、高温で湿度の高いような室内で作業を行っていたり、運動することで、大量の汗をかき、身体から水分が奪われます。こうなると脳の体温調節機能は狂い、身体は暑く、汗をかかなければならないのに、脳は汗をかく事を指示しなくなります。こうなると身体は場合によっては40℃以上の高温となり、意識障害になり最悪のケースは死に至るというものです。

また、日射病はその条件に、「炎天下」つまり、日光が原因となり屋外での活動で発汗による体温調整が追い付かなくなり皮膚は赤くなり(汗をかこうと肌の下の毛細血管が広がるからです)、吐き気やめまい等の症状を引き起こすという状態です。

現在は、熱中症というものを3段階に分けて考えています。

第1段階は、軽度な状態で、従来の熱痙攣、日射病、熱失神が該当します。

第2段階は、中度な状態で、熱疲労が該当します。

第3段階は、重度な状態で、熱射病が該当します。

この内、第1段階は、痛みを伴うような筋肉の痙攣が続いてしまったり、血管の拡張によって血圧が低くなることで失神などを引き起こします。まためまいや吐き気という事も起きます。この段階は、適切にケアをすれば自然と回復していく事も多いのですが、次の第2段階、汗を大量にかいているが、顔が青白く、意識が定まらなかったり、吐き気やめまいが起きている熱疲労は、そのまま適切な処置をしないと脳の体温調整機能に変調を起し、第3段階の熱射病に進む危険性があります。熱射病となれば、異常な体温の上昇と、汗をほとんどかいていない、意識混濁などの状態に陥ります。この段階では即座に病院に連れて行かなくては危険です。

日陰で涼しい風にあたる、身体を休める、適切に水分を補給などすればいいというのはあくまで第1段階までですので、おかしいと思ったらすぐに医療機関での受診をしてください。

ちなみに、身体を効率良く冷ますには腋の下や首、鼡徑部という部分に大きな動脈が通るので、そこに重点的に氷などを当てる事が良いです。

厚労省が出している主に事業者向けのポスターですが、熱中症について予防などがうまくまとまっているものあがありましたので、こちらから見てみてください。

いずれにしても、熱中症というのが今は一般的ですし、それぞれに段階がある事、おかしいと思ったら即座に医療機関に行くという意識は大事ですね。

さまざまな飲料水とその違い

市販でも多くのスポーツドリンクが売られています。これらの中には「熱中症対策」というポップを貼って売られているものもこの時期に良く見受けられます。

では、実際にどの様な状況で、どのようなドリンクを選ぶのが良いのか、その点をここでは書いてみようと思います。

経口補水液とスポーツドリンク

市販されている水分補給むけの飲料水は大きくこの2つに分けられると言えそうです。

経口補水液は、OS-1、アクアソリタ、アクアサポートを良く見かけます。それに対してポカリスエット、アクエリアスなどをスポーツドリンクとここでは考えます。

まず、圧倒的に違う点は、経口補水液はスポーツドリンクに比べて、ナトリウムとカリウムが多く含まれているという点です。ものによってはスポーツドリンクの2~3倍の量の差があります。ちなみに、血液の中の液体成分を血漿(けっしょう)といいますが、この中には100ml当たり300~350mlのナトリウムが含まれています。経口補水液の中にはおよそ100mlあたり115mlほど(ものによって差があります)。これだけみると少ないように感じますが、スポーツドリンクはこの半分から1/3程度です。また、難しい話になりますが、ナトリウムやカリウムの量は血漿浸透圧(血管から周りの細胞に水分が移動したり、周りの細胞周辺から血管に水分が移動するときの力)に影響を与え、血漿に近い経口補水液の方が効率良く失われた液体をナトリウム等と共に身体に取り込みやすくなります。

水分欠乏性脱水とNa欠乏性脱水

どの様な状況でそれらをチョイスしていけばいいのか。脱水と言っても大きく2つに分かれます。水分欠乏性脱水とナトリウム欠乏性脱水です。ほとんど運動などせずに、活動的ではない状態では、水分が主体に失われていきます。これが水分欠乏性脱水です。この状態では喉が渇いたり、尿の量が減少していきます。この時に補給するものはナトリウムなどが失われているわけではないので、水などでもいいと思います。

これに対して強度の高い運動や下痢、嘔吐などが激しい時は、身体から水分だけではなく、胃液や腸の液体に含まれるナトリウムやカリウム、重炭酸イオンなどが大量に失われます。この状態をNa欠乏性脱水といい、頭痛や立ちくらみ、血圧の低下等が起きやすくなります。この時は単純に水というよりもナトリウムなどを多く含んでいる飲料水が適しています。

ここまでをまとめると、激しい運動や高温条件の中で活動をする場合は、ただ水を飲んでいるからと言って、水分補給には適さない事があるという事です。ナトリウムやカリウムが失われていくわけですから、それらを含む飲料水を摂取することが大切です。その中でも、経口補水液は他のスポーツドリンクよりも多く含んでいる飲み物ですから効率良く体内に水分を取り込めると言えます。ちなみに、運動時においても、できれば日常的にもカフェインを多く含むお茶やコーヒー、紅茶は利尿作用が働きます。脱水という観点からはあまりお勧めできない飲み物になります。

スポーツドリンク

Na欠乏性脱水の予防に、経口補水液が優れているという事は書きましたが、では、スポーツドリンクの良さは何があるでしょうか。

1つは糖度を含み、味も飲みやすいという点。もう1つはアミノ酸やクエン酸を含んでいるという点です。経口補水液にはアミノ酸やクエン酸は含まれていません。これらは特に運動、活動時に必要なエネルギーを取り出すための体内での代謝機構にTCAサイクルというものがあります。このサイクルが働く事で運動時のエネルギーを効率良く得る事が出来るのですが、アミノ酸やクエン酸はここに必要な成分です。

つまりスポーツドリンクは、運動時の脱水状態を予防する点ではやや経口補水液に劣る面もあるものの、エネルギーを効率良く取り出せる点では優れていると言えます。

ただし、スポーツドリンクの多くは糖度が高いという点は、体内に水分を取り込む際の弊害になります。身体に吸収される水分の大半は腸からですが、糖度が5%という基準を上回ると水分吸収の効率を下げてしまいます。すべてのスポーツドリンクが5%を超えているわけではありませんが、おおむね、5%弱まはた超えているものがほとんどです。水分吸収を考えるのであれば、スポーツドリンクを水などで割って少し糖度を下げた方が良いと言えます。

水分補給の際の注意点

「喉が乾いたらすでに脱水の状態」という言葉で、とにかく水分を摂る事が推奨されていますが、これに過剰に反応し過ぎ大量の水を一気に補給すると、身体の中に水が多くなり、結果として血漿のナトリウムが相対的に減少する状態になります。このような状態を低ナトリウム血症といいます。重症なケースは意識混濁などに陥ります。

では、どのくらいの量をどの様に飲むことが大事なのでしょうか。

・おおむね、ご自身の体重を30で割った数字が、1日に必要な水分量。60kgの方なら60÷30で2ℓの水分。運動をされている方はもう少し必要です。この場合は、活動、運動前に体重を測り、60kgの方が運動後(この時は出来るだけ汗をふき取ったり、出来るだけ服も一緒がいいです)に体重の2%以内の減少率なら脱水状態ではないと判断できます。60kgならば58.8kgを下回っていると水分が多く失われたという事になります。逆に増えていると水分補給しすぎたという事になります。

一気に飲まずにこまめに飲む。理想はコップ一杯200mlをゆっくりと飲むことがいいと言われています。先ほどの方なら1日にコップ10杯を飲むという事になります。

冷たすぎるものはかえって脱水を助長する危険があります。急激に冷たい水を飲むと、胃や腸の温度が下がります。これによって、身体は胃や腸に血液を集め温めようとし、結果として、体内の血液のバランスが悪くなります。コップの表面に軽く水滴が付いているくらいの温度、おおよそ15~20℃くらいのものが丁度いい温度となります。

スポーツドリンクを飲む際は出来れば2~3倍は薄めて糖度を調整して効率の良い水分吸収を促してください。ただし、塩分などは少し足りなくなるので、梅干しなど他のもので補う事がより良いと思います

・経口補水液は、水分補給には優れていますが、他の飲料水よりもナトリウムが多いという事は塩分過多になる場合があります。塩分を他の食事等であまり多く摂取しないように心がけてください。また、必要以上に飲む事もこの点でお勧めはできません。

まとめ

スポーツドリンク、経口補水液、水、カフェインを含むお茶、アルコール、どれも液体ですが、熱中症が起きやすいこの時期にはまず利尿作用のあるお茶やアルコールでは水分補給にはならないので、気をつけてください。

ご自身の活動内容に合わせて、水がいいのか、経口補水液がいいのか、スポーツドリンクか少しだけ考えて飲んで頂く事でより効率良く水分補給が出来、身体から汗として奪われる水分や塩分をコントロールできると思います。上手に補給して熱中症等にならないようにお過ごしください。