鍼灸マッサージ院ミモザです。

湿気と脾の関係

以前のブログでもGW最終日が立夏となり、暦の上では今は夏となりました。日本の場合は夏の前に梅雨がきますが、ここだけいわゆる中医学で言う季節と異なっています。中医学では夏の次は長夏になり、この時期は「脾」が影響を受けやすくなるのですが、日本の場合はこの梅雨の時期に「脾」が影響を受けやすくなります

脾は「燥を好み、湿を嫌う」という性質があり、過度の湿は邪気となって身体、特に脾に影響を与えてしまいます。脾の東洋医学的作用は「運化作用(食べ物を消化・吸収する作用)」と「昇清作用(代謝にかかわる作用)」そして「統血作用(血液の凝固など血を統括しています)」の3つがあります。

 

脾胃と陰虚

脾が弱くなると運化作用による消化吸収がうまくいかなくなり、そこから必要なエネルギーを取り出せなくなります。このエネルギーをもとに氣や血が作り出されるのですが、それがうまく機能しなくなるという事になります。

運化昇清の作用が低下すると、「食欲減退・内臓下垂・お腹の張りや痛み・下痢・むくみ」などがもたらされます。統血作用が低下すると、「生理不順、月経過多、血尿、血便」などにつながります。

まずは脾の働きを良くするために「甘味」のある食べ物で脾を滋養し、利尿作用のある食べ物や飲み物(はと麦茶など)で身体から余計な湿を取り除いてください。

妊娠とその後の変化

妊娠中のケアが本日の本テーマなのですが、先に脾の話をしたのは、妊娠によって少なからず脾が影響を受けるからです。

まず、卵巣から卵子が出て卵管で受精します。受精後は卵割を繰り返しながら卵管を通り、最終的に子宮の内側に着床します。これら女性の生殖器を東洋医学では胞宮という名前でその機能をあらわします

任脈

胞宮には任脈や衝脈、督脈などが大きな影響を与えますが、特に妊娠中の子宮(胞宮)には任脈(月経などは衝脈)が影響を与えます。

妊娠した際に、身体の血は子宮に集まります。その働きをサポートしているのが任脈であり、衝脈となりますが、子宮に血が集まるという事は、妊娠中は母体の血が減りやすくなるを意味しています。いわゆる血虚という状態です。この血虚の血はもともと津液という身体のなかの水分をベースに作り出されていますが、津液(または陰液)が脾や胃の働きの低下によって減少してしまう状態が陰虚(陰液が足りない状態)、また脾や胃の働きで作り出された陰液が腎の働きで熱せられて身体に有用な氣や血になるのですが、この腎が弱まれば熱する力が減り、結果として血や氣が十分作れずに氣血両虚という状態になります(このあたりは前の段落の人体図を参考にしてください)。

大きくまとめてしまうと妊娠によって東洋医学的には

①胎児の発育によって母体は陰液(血)が不足気味となり、口が渇く、便秘、微熱、めまいなどにつながりやすい

②胎児の発育により、母体の氣の運行や流れを妨げられ、氣の停滞を作りやすくなる。

③陰液の不足や腎や脾・胃その他肝などの働きが低下し、水分代謝に影響を与え、痰飲(水毒)ができる。これによって神経過敏、不眠、胸腹部膨満感、嘔吐など生じやすくなる。

④脾胃の機能低下(胃腸障害)や腎虚の状態である腰痛、むくみ、歯の痛み、耳鳴りなどがでることがある。

という事になります。

妊娠中の変化に対してのケアと注意点

先ほど書いたように妊娠中は血虚、陰虚になりやすいわけですから、汗や尿などで過度に身体の水分を出してしまう事は陰虚を助長することにもなります。汗は運動などで無理にださないように(大量にかかなければ適度な運動は大事ですし、心身の健康につながります)。そして利尿作用の強い飲食は避けるようにしてください。

脾はこれからの時期に影響を受け、その為に余計な水分をためない事で身体に湿を溜めこまない事が大事という事は一番最初に書きました。しかし、こと妊娠中はそれ以外にも注意が必要です。先ほどの事も絡めれば強い利尿作用を持つハト麦などは摂取しない方がいいと思います。

食べ物に関しては以下の事を考えてみるといいと思います。

①母体が血虚になりますから、血を補うものを意識して摂ってみる。具体的には…

 人参、ホウレンソウ、レバー、落花生、ぶどうなど

②血虚は即ち陰の虚につながるので、陰を滋養し、補うものを食べてみる。具体的には…

 牛乳、黒ゴマ、ホタテ、牡蠣、たまごなど*貝類はしっかりと火を通してくださいね。

③血は氣から作り出されるので氣を補うものも食べる。具体的には…

 ジャガイモ、米、ブロッコリー、シイタケ、キャベツ、鶏肉、牛肉など

④陰虚になると身体の陰が足りなく、身体を冷やせずに内側に熱が溜まるので身体を温めるような辛いものや熱性の食べ物は過度に食べないように注意をしてください。

薬膳のポイントとしては甘味と酸味を同時に摂ることで津液(陰液)を増やす効果が期待できます。この点では、

トマト、キュウリ、パイナップル、梅、ミカン、リンゴなど多くは果物を上手に摂るといいと思います。

妊娠中のお薬

これに関しては必ず医師と相談してください。たまに、患者さんで妊娠中だけど風邪を引いたからという事でご相談いただきますが、まずは母体が元気である必要があるのでお薬が絶対悪であるという概念よりも早く治す事を考えてください。そのうえで、医師に相談をしてください。

東洋医学的には汗をかいて熱をだして解熱する方法はあまりお勧めできません。先ほどの過度の発汗を避け陰虚に拍車をかけないためです。その点では、漢方で対処するにしても本当は漢方医に相談ですが、発汗を促す麻黄というのは避けた方がいいかもしれません。それが入っている風邪の漢方は葛根湯ですので、妊娠中は葛根湯ではなく桂枝湯等の方がいいと思います。また、妊娠中の貧血には葉酸や鉄分が摂取という事になりますが、漢方では当帰芍薬散というのが補血、利水の効果があり安胎薬ですのでいいと思います。

妊娠中は普段と違い、身体の変化も大きいものです。まずは食べ物や過ごし方から健やかに過ごせるように参考にしていただけるといいと思います。