脈を診る

鍼灸、漢方ではとりわけ現代医学とは違う診立てをします。四診という「望診」「聞診」「問診」「切診」という4つを合わせてその人の状態を把握していく事になります。

その中の1つ切診では、身体に直接触れて診る事を意味していますが、お腹の状態を触ってみて「冷たい」「じとじとしている」「お腹の中にじゃぶじゃぶと水がたまっている感じがする」など腹診といわれるものや、脈をとって身体の五臓六腑のどこに原因があるのかを調べる脈診というものがそれにあたります。

「脈を診る」方法はいくつかありますが、まずは相対的にどの臓腑のバランスが崩れているかを比較していく方法。

脈診

脈は左右の橈骨動脈と言われる部分で診る事になりますが、それぞれの場所に関係の深い臓腑があります。手首に近いところから寸口・関上・尺中という部分に分かれ、そこに指を当てそれぞれのバランスを診る比較脈診という方法や、脈の状態が強い、弱い、速い、遅いなど脈の状態を診る脈状診という方法があります。いずれも経験が必要ですが、ご自身の脈を取り続けるとなんとなく調子が良くないという時にその変化に気付くことが出来ると思います。ご自身でやる場合は下のように指をあてるといいと思います。

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脈で妊娠を知る

この脈の状態で妊娠したかどうかを知る方法というものも、古典から伝わっています。主に使うのは先ほどの脈の状態を診る脈状診です。この時に「数珠がつながっている様に玉が転がるようないつもよりも強い脈」これを「滑脈」と言いますが、これが出ていると妊娠していると言われています。前々回の時に妊娠によって血の流れが強くなる事もこの脈になりやすいと思います。

もう1つは「神門の脈」を診る、という事になります。

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神門は「手少陰心経」にあるツボの名前ですが、おおよその場所は小指の先端から手首に向かったラインで、手首のシワと交叉する場所あたりです。ここは普段あまり脈打っている場所ではないのですが、妊娠している時は触れやすくなると言われています。この「神門の脈」も妊娠しているかどうかを判別する時に使う脈の診立てとなります。

そして、この神門の脈は左右比較して「右がより強ければ胎児は女の子、左がより強ければ男の子」とされています。これは東洋医学の陰陽論に則していて、右は「陰」に属していてこの陰には「女性」が属しています。左は「陽」で男性が属しているという点で、神門の脈による左右差が性差のポイントとなっています。

特に、胎児の性別を気にされている場合、この神門の脈による性差はあくまで東洋医学の考えですので、深刻に考えず自分の脈はどちらなんだろうという気持ちで試していただけると良いと思います

乳幼児の脈(虎口三関の脈)

妊娠や性差の見分ける方法としてご紹介した脈診でしたが、乳幼児の脈診というものがあります。これは古くは「鍼灸大成」という古典や日本では「鍼灸重宝記」という文献にみることの出来る「虎口三関の脈」というものです。

対象は6歳くらいまで。なかなか自分の体調を上手に伝えられない乳幼児の診立てに使う事の出来る脈診ですが、脈診は触れてその強さや状態を診るものですが、この「虎口三関の脈」は見て判断するものです。場所は男の子であれば左の人差し指、女の子であれば右の人差し指となります。

虎口三関の脈

親指と人差し指の付け根があたかも虎の口の様だという事で「虎口」となっていますが、人差し指の関節の節にそれぞれ「風関」「気関」「命関」と当てはめているので「三関」となります。図の濃い目の青いラインが血管ですが、お子様の状態が宜しくない時にここに浮きでる脈の状態を見て身体の状態を知るのが「虎口三関の脈」です。

血管の浮き出ているラインが風関まででしたら、病は浅く治りやすい、気関まで到達していたら病は進行していて重い状態、そして命関まででしたら病は深く進行し治すことが困難であるという判断をします。

また、このスジの色が青いものは驚風をあらわし肝疳として、赤いものの内、淡い色は寒熱の表証、濃い色は傷寒をあらわし心疳とする。黄色いものは脾が困窮して疲れています(脾疳)。白いものは肺疳の病、そして黒いものは腎疳をあらわし難治性と判断します。

小さなお子様をお持ちの方は調子が悪そうな時にお子様の指を見てあげてください。先ほど書いたように男女で見る指は違いますのでお間違えないように。

妊娠中マイナートラブルと対処

つわり

つわりだけでなく、身体の状態は様々な要素が絡んでいますので、一概に言う事は難しいのですが、タイプ別に大きく分けてみます。

脾胃の虚タイプ

日頃から胃が弱く、神経質で思い悩む事が多い方は胃の働きが低下して「吐気、嘔吐、食欲不振、お腹の張り、めまい、日中に良く眠くなる」などのつわりにつながりやすくなります。

対処

胃の働きを助け、身体を温める生姜やナツメ、山芋などを適度に食べてみてください。ただし、生ものや冷たい飲料水などは胃腸の働きを弱くしてしまうので控えめに。

肝熱タイプ

イライラしたり、怒りっぽくて身体のエネルギーを上下に循環できずに、停滞したり、頭の方へ熱が昇って行ってしまうタイプです。この場合は、「口の中が苦くなったり、酸っぱくなったりしたり、胸やわき腹の張りを覚えたり、めまい、便秘や色の濃い尿を出しやすくなる」などのつわりを感じやすいです。

対処

緑豆やきゅうり、トマト、梨、大根、ナス、レタス等は身体にたまった熱を発散させてくれます。身体を冷やすのではなく溜まった(先ほどもエネルギーの停滞と書きましたが)熱を発散させるようにしてください。ご自身の好きな匂いなどでリフレッシュを図るのも良いと思います。

痰飲内停タイプ

上手く不要な水分を身体から排出出来ずに、胃のあたりに冷えを感じてしまいます。「よだれや痰(色は薄い)、みぞおち辺りに張りを感じる、食欲不振、めまいや息切れ、足のむくみ等を感じる。また嘔吐や口の中がネバっぽく感じる」などのつわりを覚える事が多くなります。

対処

小豆や山芋など利尿作用のある食べ物を食べてください。ただし、身体の水分が減ることは身体を陰虚にします。これは妊娠中避けるべき状態なので、量は加減してください。冷たい物を食べたり飲んだりすることは極力避けてください。

便秘

便秘も様々な要因があります。

ガスが溜まりやすいタイプ(気滞タイプ)」の方は大根やパセリ、シソや柚子等で気の巡りを良くしていくべきですし、「身体が冷えて腸の働きを低下させてしまっているタイプ」は、もともとクーラーや冷風にあたる事を好まず、手足も冷えやすい方に起こりがちですので、身体を温める人参や生姜、にんにく、にら、エビなどが適しています。もちろん冷たい物を摂りすぎることは良くありません。逆に「身体が火照りやすく便も硬く乾燥しているような熱タイプ」の便秘の方は、つわりでも挙げましたが、身体から余計な熱を取った方がいいので、人参やバナナ、筍、キュウリ、ナス、梨などを摂ってみてください。コロコロした便や貧血気味、立ちくらみ、肌のつやがないような方は「血の不足による便秘」です。この場合は餅米やほうれん草、小松菜、くるみ、レバー、プルーンなどで対処してみると良いと思います。「気の不足(エネルギーの不足)」によって排便後に疲れたり、便意があっても実際は排便出来ないような方が多いのですが、この場合は気を補うような食べ物、大豆や牛肉、鶏肉、山芋、ジャガイモ、人参などが良いと思います。

むくみ

むくみはすぐに妊娠中毒症と判断せずかならずドクターの診察を受けてください。東洋医学的には下半身を中心としたむくみは脾胃の失調が原因であることが多いです。もしくは、身体冷えていて身体を温めるためのエネルギー不足が体外に余計な水分を排出出来ない状況になっているか、この2タイプが多くみられます。

脾胃の失調

身体や頭の重だるさを感じて、食欲不振や吐気を覚えやすい、便が柔らかい事が多い等はこのタイプである事が多いので、身体から余計な水分を出す緑豆、小豆、トウモロコシ(本当はトウモロコシの髭の部分が強い利尿効果がありますが、妊娠中はあまりこの部分はおすすめできません)、冬瓜などがおすすめです。

エネルギー不足(腎虚)

腰や膝に力が入らず腰から下が重だるく、特にくるぶし周辺が冷えているような感じがするタイプです。もち米やエビ、にら、ネギ、生姜、ニンニク、かぼちゃ、栗、くるみなど、身体を温めながら余計な水分を外に出してい蹴るようにするこれらの食材が適しています。

結語

たくさんの事を書いてしまいましたが、自分のタイプを知ることが特に大事です。身体が冷えて便秘なのに、生野菜を食物繊維と思い食べ過ぎれば、身体をより冷やしてしまい、結果として便秘が治らない事もでてきます。

今回のブログはほとんどが東洋医学的に見て診立てを考えたり、タイプを分けています。これがすべてではないですし、きっちりと当てはまる事も少ないかもしれません。そんな時は些細な事も、施術家や医師に伝えて最適な状態で妊娠から出産まで体調管理をしてください。