鍼灸マッサージ院ミモザです。

4月に入り温かい日も出てきました。冬に動かなかった方も、この機に運動を始める方もいらっしゃるのではないでしょうか。以前も書きましたが、冬に陽気を溜めた体を春になって外に放出することは季節の養生として理にかなっています
しかし、急な運動は体に負担をかける事も事実。今回は急なジョギングや長距離のランニングにおいて起きやすい膝の痛みについて書いてみようと思います。

ランナーズ二―という言葉を聞いたことはあるでしょうか?特徴として膝の外側辺りが痛くなるもので、特に坂道を下るとき、階段を降りるときなどに痛みを感じる事が多くなります。ランナーズ二―とは、ランナーに多いからという理由で付けられているのですが、医学的には「腸脛靭帯炎」と言われます(このように特定の運動に多いからという意味で名前が付けられているものは多いです。テニス肘、ゴルフ肘、野球肘などです)。
ランナーズ二―、腸脛靭帯炎は、腸脛靭帯という太ももの外側にある線維が、太ももの骨(大腿骨)の一部(大腿骨外側上顆)と摩擦していくことで炎症を起こしている状態です。

腸脛靭帯炎

皆さんの太ももの前側を触るとそこは筋肉ですから柔らかいと思いますが、その柔らかさに比べて外側を触ると硬いスジを感じる事が出来ると思います。それが腸脛靭帯です。上の図で左側は脚を正面から見た絵、右側は横から見ています。この腸脛靭帯、もともとは股関節の脇にある大腿筋膜張筋(だいたいきんまくちょうきん)とお尻の筋肉、大殿筋(だいでんきん)から連続的に筋肉の柔軟で弾力性に富んでいる筋線維から柔軟性と弾力性に欠けるが強固な腱や靭帯組織のような線維に移行していくことで作られています。そしてスネの骨の外側にくっついていきます。
大腿筋膜張筋やお尻の筋肉である中殿筋などと共に腸脛靭帯は、片足で立つような場合に腰が砕けないように支えてくれる組織です。
この柔軟性に乏しい腸脛靭帯が更に硬くなることで、太ももの骨の一部と擦れ合い炎症が起き痛みが出てきます。

そこで良くとられるセルフケアそして施術アプローチが、殿部のストレッチであったり、殿部、股関節周りの指圧、鍼、マッサージです。
これは腸脛靭帯が先ほども書いたように股関節や殿部の筋肉が始まりですので、もともと硬くほぐれづらい腸脛靭帯より、大元の筋肉の緊張を改善して、靭帯の過緊張を緩和させる目的で行われる事が多いです。

例えば

殿部ストレッチ
殿部、TFLストレッチ

以上のストレッチなどはその筋肉たちに対して有効です。しかし、膝の痛みが強く、筋肉たちも硬くなりすぎていると、ストレッチがなかなかやりづらくなります。そこで、お尻の筋肉を緩める方法として、内ももの筋肉を収縮させる方法があります。

座位内転筋1内転筋トレーニング

座った状態でボールなどを内もも同士で挟み、押し合うように内ももを鍛えます(おおよそ6~10秒押したら、いったん緩めます)。または、床に横になり下の脚をゆっくりと上に挙げる。
いずれにしても、内ももを使う事でお尻の筋肉が緩みます。これは、筋肉の収縮におけるパターンの1つです。例えば腕の筋肉。力こぶを作るように肘を曲げた際に、力こぶを作る筋肉は収縮しています。しかし、その逆、いわゆる二の腕(腕の裏側の筋肉)は緩んでいます。もし、二の腕が緩まなくては肘は曲げる力と伸ばす力が拮抗してしまいスムーズな動作が出来ません。このように動かす際に主に使われる筋肉を主働筋、そしてそれと反対の作用をして関節の運動をサポートしているのが拮抗筋と言われます。主働筋が動くとき、拮抗筋は緊張せず緩む、この性質を先ほどのお尻にも当てはめてみると、お尻の特定の動作に対しては内ももの筋肉が拮抗関係にあります。そこで、内ももを主働筋として使ってあげると拮抗関係であるお尻は緩むということになります。

さて、では腸脛靭帯炎、ランナーズ二―はお尻の筋肉や股関節の筋肉を緩め、炎症がおさまるまで安静にしているといいのでしょうか。もちろん半分は正解だと思います。しかし、もう半分は疑問符です。大事なポイント、なぜ、お尻の筋肉や股関節の筋肉が緊張してしまったのかという点には触れていません
この点に関しては様々な要因があります。骨盤の歪み、姿勢、歩行や日常動作の左右差など。
これに関しては施術者やトレーナーがそれぞれの考え方で見極めアプローチをしている事と思いますが、今回は歩行について少し触れてみます。

まず、できれば2人1組になる事が望ましいのですが、立った際の足首に注目してみましょう。特にアキレス腱です。うつぶせになってもらい水性ペンなどでアキレス腱に一本線を引いておきます。その状態で立ってもらいます(一人でやる時は全身が映る鏡の前に背中を向けて立って、鏡をみて確認してみてください)。

アキレス腱ポジション

一本引いた線は、図の真ん中の赤い実線と点線のようにまっすぐになっていますか?これが、左右にあるように曲がっているようでしたら、足首の構造に問題があるかもしれません。足裏のアーチの異常か、いずれにしても立つだけでアキレス腱に負担をかけているわけですし、足の構造に問題があればその上の膝、股関節、骨盤、背骨に問題を生じさせます
また、本来はジムにあるようなランニングマシンの上で確認するといいのですが、歩いている際の蹴りだした足の足裏の向きに注目してみましょう。

歩行パターン

図の左側は全体的に見える状態に対して、右側は、足裏がやや内側を向いて床を蹴られています。これは本来、かかとから着地した足は小指側へ重心を掛けた後に最終的には親指に重心を移し蹴り出す、母趾荷重のはずなのですが、そのパターンがくずれ、小趾側での荷重で歩いていると図の右側のような歩き方になってしまいます。この場合、足を外から巻くように歩く傾向にあり膝の捻じれ、股関節の負担が大きくなっていきます

腸脛靭帯炎にかかってしまった方は、まず、普段からの立ち方、そして歩き方をチェックしてもらい、なぜ股関節やお尻に負担がかかってしまったのかを理解しておくとより再発の予防につながります(今回は足については割愛させていただきます)。
もちろん、ストレッチも有効ですので忘れずにやっていただくと、障害の予防につながると思います。ケアをしっかり行い楽しい運動ライフを送ってください。