施術院をやっていると腰痛でご来院される方が非常に多いのですが、その原因は多岐にわたり、なかなかしっかりと診立てないと施術アプローチが決定出来ないものです。しかし、昔から腰痛の反応点、ツボというものは伝えられていて、それを上手に使う事で施術を行って腰痛に対応していることもしばしばです。今回は、ご自宅でも腰痛対策、予防のために出来るツボをご紹介していこうと思います。

経絡とツボ

腰部経絡図

左は全身の経絡と右が胴体部分の経絡です。

全身の経絡図は少し見づらいでしょうが、なんとなく全身に流れがあるんだなと思っていただければ大丈夫です。基本のラインは14本あります。その内、正経と呼ばれる五臓六腑に関連している流れが12本、お腹側の正中線上に1本、背中の背骨のラインに1本、合計14本です。

右の図は腰周りの経絡です。特に腰部に関しては膀胱経という流れが通っています。

東洋医学のアプローチも様々ありますが、気の流れ道である経絡において気の滞りがあることで何かしらの異常を出すという考えもあります。腰に関しては膀胱経という流れですので、膀胱経の滞りが原因で腰痛になるという考えから膀胱経を施術の対象にしたアプローチもあります。また、腰には腎の気が集まるという事から腎経に関する異常ととらえアプローチをしていく事もあります。

しかし、セルフケアで行っていただく分ではこのような考え方は複雑になりますので、少し違うポイントで書いてみます。

五労

五労の労は、労働の労です。この五労が出てくるのは東洋医学の原典である「黄帝内経」という書物にも出てきます。その頃から従事している労働や生活習慣から病気になりやすいものがあると考えられていました。代表的な五労は、「久行、久視、久坐、久臥、久立」の5つ。「久」は「久しく」つまり長く、持続的にという事を意味します。持続的に長いこと特定の労働や生活習慣をおくると特定の臓器に負担をかけますよ、という考え方です。五労にはその他にも「志労、思労、心労、憂労、痩労」や「肝労、心労、脾労、肺労、腎労」(両方とも「諸病源候論」から)という五労もありますが、今回は最初の五労の説明のみにしようと思います。

久行(きゅうぎょう)

久しく行くと筋を傷(やぶ)る」。つまり、行くとは「歩く」という意味ですので、「長いこと歩きとおしていると筋を傷めます」ということをあらわしています。久行は「」に影響を与えます。長いこと歩くと肝を傷め、肝が司っている筋肉や運動に影響が出て、筋肉が痛んだり、関節運動が痛んだりします

久視(きゅうし)

久しく視れば血を傷る」。「長いこと目を酷使していると全身の血流が悪くなります」という意味です。久視は「」に影響を与え、司る血脈(けつみゃく)にも影響を与えるので、目を酷使していると心を傷めるという事になり、その結果血脈にも影響を出してしまいます。

久坐(きゅうざ)

久しく坐せば肌肉(きにく)を傷る」。「長いこと座り続けると筋肉を傷め筋肉の代謝を悪くする」という意味です。東洋医学では筋と肌肉を分けて考えています。筋はスジや関節運動に関係するものとして、腕や脚など四肢に関係する筋肉を筋ととらえ、肌肉は体幹部等の皮下脂肪なども含めとらえ、さらにエネルギー源としての筋肉という点でも考えています。筋は直接関節を伴うような運動に関わる筋肉、肌肉はエネルギー源としての筋肉の代謝の意味も含め、皮下脂肪を含んだものととらえています。久坐は「」に影響を与えます。脾は大まかに言うと胃腸ですので、消化吸収から代謝も含めたものになります。この脾が肌肉を司るので先ほどの様な肌肉の意味合いが出てきます。

久臥(きゅうが)

久しく臥すると気を傷る」。臥は横になっているという事です。「長いこと寝たきりのような状態が続くと気の働きが弱くなる」という意味です。をつかさどっているのは「ですので、久臥は「」に影響を与え、肺が弱くなるという事につながります。

久立(きゅうりつ)

久しく立てば骨を傷る」。「生活の大部分を立って過ごすような方は骨を傷める」という事です。「腎」が骨を司っていますので、久立は「」に影響を与えます。また腎が弱められる事によって腎が関係する歯も弱くなるという考え方です。

結局、何か1つの動作を特異的に行い続けるとそれに関連した五臓が影響を受け、それぞれが司っているものの働きに異常を出してしまいます、日常の生活もバランスよく過ごす事がいい事です、という意味です。

これをどうセルフケアに使うか、ご自身の生活パターンで負担のかかりそうな五臓を認識しておき、日々のセルフマッサージに活かすという事が出来ます。今回は腰痛ですので、例えば長いこと立っていて腰が痛くなったと思えば久立ですので腎のツボを押して腰痛の予防改善に役立てる、歩きすぎていて腰を痛めたら久行から肝のツボを押してみる、そのような方法で簡単ツボ押しをしてみてはいかがでしょうか?

ただ、実際どこを押せばいいのかという事が分からないと出来ませんので、次に紹介してみます。

その経絡の「兪穴」を押してみましょう。

兪穴とはそれぞれの経絡にある重要な経穴の1つです。五兪穴という考え方があり、井穴、榮穴、兪穴、経穴、合穴という5つの重要穴があります。井穴は「心下満(みぞおちあたりの緊張や膨満感)を主治する」榮穴は「身熱を主治する」兪穴は「体重節痛を主治する」経穴は「喘咳寒熱(咳や発熱など)を主治する」合穴は「逆気而泄(逆気は冷えのぼせ、泄は下痢)を主治する」というように、それぞれ特徴があります。もちろんこれは全てのケースに当てはまることはないのですが、大まかにそういう性質があるんだと考えてください。

なぜ、兪穴を押してみるのか、先ほどの説明でも体重節痛、つまり関節や骨、動きの痛みに関しては兪穴が使いやすいという事になります。

歩きすぎて腰が痛くなりそう、もしくは痛い時は肝経の兪穴

座りすぎて腰が痛くなりそう、もしくは痛い時は脾経の兪穴

横になりすぎて腰が痛くなりそう、もしくは痛い時は肺経の兪穴

立ちっぱなしで腰が痛くなりそう、もしくは痛い時は腎経の兪穴

これらを使ってみてセルフケアしてみてはいかがでしょうか?ちなみに、目を使い過ぎて腰が痛くなるというシチュエーションがあまり思い浮かばないので、書いてはいませんが、疲れ目と腰痛であるならば心経の兪穴でもいいと思います。

それぞれの兪穴

肝経の兪穴…太衝(足の甲にあります。親指と第2趾の骨の間を足首に向かって触り止まった所です。)

腎経の兪穴…太谿(内くるぶしとアキレス腱の間で、触ると拍動を感じる所です。)

脾経の兪穴…太白(足の親指の関節(外反母趾で痛むところ)のかかと寄りの所です。)

肺経の兪穴…太淵(手の平側で、親指側の手首のしわが出来る所で拍動を感じる所です。)

五労と原穴

また、兪穴ではありませんが、腰痛の時に使う点で腰痛点というツボがあります。これは手の甲側で、人差し指と中指の間と薬指と小指の間の骨の間をそれぞれ手首に向かって触り止まった所にあります。これもセルフケアで使いやすいツボかと思います。

図ではそれぞれ久臥、久坐、久行、久立と書いてありますので、ご自身の生活スタイルに合わせて「痛気持ちいい」位の刺激で押してあげてください。ゆっくり押して初めに感じた痛気持ちいい感覚が和らいだら終了です。左右行ってみてください。