前々回のブログでストレッチに関して書きましたが、今回はその第2弾。第1弾では、オーソドックスに行われているであろう静的なストレッチは、ケガの予防や運動パフォーマンスの向上を目的に運動前に行う事は、その目的を達成するどころか、ケガの危険性を増し、パフォーマンスの低下へとつながる可能性がある事を書きました。

今回は、前回のストレッチブログの中に書いたストレッチの種類の内、いくつかについて書いてみようと思います。これによって、自分自身がどのストレッチを選ぶかを知ることでセルフケアに役立ててみてください。

PNFストレッチ

PNFは英語の頭文字ですが、日本語にすると「固有受容性神経筋促通(法)」というややこしい名前になります。この言葉は3つの単語から成っています。「固有受容性」「神経筋」「促通」です。初めの「固有受容性」は我々は様々な刺激を常に受けていますが、それらの刺激を受け止めているセンサーが皮膚や筋、腱その他様々な組織に存在しています。そのセンサーを「受容器」と言います。様々な受容器がありますが、その中で筋や腱、前庭迷路などに存在していて、体の位置や動きに関する情報や刺激を特にキャッチする受容器の事を「固有受容器」と言います。次の「神経筋」は、そのままですが、運動神経を介して電気信号が筋肉に伝わると筋肉や腱が動かされます。最後の「促通」はそのままです。

つまり、PNFは「筋肉や腱などに存在する固有受容器に、牽引や圧縮、抵抗運動などの刺激を与えることで、神経と筋肉における反応を活発にしていく」という事になります。それでもややこしいですね…とりあえず、この理論を使ったストレッチが大きく2種類あります。「ホールド・リラックス法」と「コントラクト・リラックス法」です。どちらも筋の収縮を利用するストレッチですが、前者は、関節の運動を伴わない方法に対して、後者は関節の運動を伴う方法です。

ホールド・リラックス法

以前、別のブログでも紹介したのですが、例えばももの裏側を伸ばしたいという時に脚を前に出して前屈していく方法があります。もしくは寝そべった状態で伸ばす側の脚を持ち上げて上半身に引き寄せるなどもストレッチとしては良く行われる方法でしょう。ここまではいわゆる静的なストレッチという事になります。ホールド・リラックス法は静的に最大限(痛みを感じる手前、しっかりと伸ばされていると感じるレベル)伸ばした状態から、伸ばされた筋肉に抵抗を加え、筋肉を収縮させます。その後、収縮した筋肉から力を抜き、リラックスさせた状態から更に伸ばす範囲を増やしていく方法です。この方法で筋肉を収縮させている時は関節は動かす事が無いようにします。この状態の収縮を筋肉の長さは変わらない収縮という事で等尺性収縮と言います。この等尺性収縮を一定時間起こすことで、筋肉にある固有受容器と腱にある固有受容器の働きによって、伸ばされ収縮させている筋肉は弛緩しやすい状況になります。このタイミングで更に伸ばしていくというのがこの方法になります。

ハムストレッチ拮抗

コントラクト・リラックス法

先ほどのホールド・リラックス法はある筋肉を最大限ストレッチさせた状態から、等尺性収縮をさせた後にストレッチを更にかけていく方法でしたが、このコントラクト・リラックス法はスタートは一緒ですが、その後は関節運動を伴わせながら筋肉の収縮を促し、その後にリラックスさせて更にストレッチ出来る範囲を増やすという方法です。大きな違いは、関節の運動を伴わない筋肉の収縮を利用するのか、関節運動を伴う筋肉の収縮を利用していくのかという点です。ホールド・リラックス法に比べ、コントラクト・リラックス法は筋肉の動く範囲での最大収縮を利用していけるというメリットはあります。しかし、実際に1人でセルフケアとして行うには難しく、筋肉の収縮状態を把握していきながら抵抗をコントロールできるペアが必要になる事がほとんどです。

実際にセルフケアという点では、先ほども書いたようにホールド・リラックス法の方が実施しやすいと思います。また、ホールド・リラックス法の方が、伸ばしたい筋肉に痛みがある場合に抵抗力をコントロールすることで痛みをコントロールしながらストレッチ出来るという点でも、メリットのある方法であろうと思います。

実際のPNFストレッチは単純にストレッチに抵抗運動という刺激で固有受容器を刺激、利用するストレッチではなく、本来最大に効果的に収縮を促す運動パターンの中で行わせることがより効果的ですし、その収縮パターンも様々です。しかし、これには相当な熟練度が必要です。今回のブログでは、あくまでセルフストレッチの為のシンプルな方法をご紹介いたしました。

経絡をストレッチ

経絡という言葉を聞いたことはあるでしょうか?鍼灸院や漢方医のところには経絡図が貼ってある所もあるかもしれません(当院には無いです)。

経絡図

このように経絡は全身を巡っています。分けると経絡は経脈と絡脈という事になり、いわゆる五臓六腑の気の本流が経脈となり、経脈同士を連絡している流れ(支流)が絡脈となります。図で見ていただくとわかるように、経絡の流れは縦方向に流れています。健康を害した時にはこの経絡の流れが悪い、経絡を支配している五臓六腑そのものが悪いなど様々な要因がからみますが、今回ストレッチとして対象にしているのは経絡の流れが悪いことによって、運動器系の疾患(腰痛、肩こり、頭痛など)に対応できないかという視点で書いています

例えば腰痛という状況で、どのような考え方ができるかという事を考えてみます。

腰痛のタイプ。

・前にかがめると痛い

前にかがむ時には、体の後ろが伸ばされていきます。このことから、後ろを走っている経絡の流れが悪くなることで気の滞りが起き腰痛となると考えます。後ろを走る経絡となると「足の太陽膀胱経」「督脈」がメインとなります。そして補助的には同じカテゴリーとして「手の太陽小腸経」(足と手の太陽経つながりという考えです)が前かがみの際の腰痛でストレッチをかけてみると良い場所という事になります。

 

前かがみ腰痛

 

膀胱経は体の背面を縦に走る経脈です。また小腸経は小指から腕の裏側を走る経脈です。そこで、この部分のストレッチをかける事が対策となります。

・後ろに反ると痛い

後ろに反った際には体の前面が伸ばされていきます。先ほどの考えから、前を走る経絡のストレッチを行ってみます。対象となるのは「足の陽明胃経」「足の太陰脾経」「任脈」です。またその関連している流れとしては「手の陽明大腸経」「手の太陰肺経」となります。

後屈腰痛ストレッチ

 

・横に傾ける、ひねると痛い

この場合は体の側面とお腹周りの流れの問題ととらえます。対象となるのは「足の厥陰肝経」「足の少陽胆経」「帯脈」となり、関連しているのは「手の厥陰心包経」「手の少陽三焦経」となります。

回旋腰痛

本来は、動きは複合運動ですので、実際は前にひねりながらかがむと痛いというようなケースが多くみられます。その際も、前にかがむ時に痛むケースのストレッチと横に傾ける、ひねる時に痛むケースのストレッチを両方行っていきます。また、実際は体はひねる動作というものが多く関与しているので、ひねりのストレッチは常に入れておくほうが良いと思います。

今回は、腰痛のケースのみイラストで載せましたが、首に関しても以下のように対象となる流れ、筋肉は書いておきますので、ご自身で対象の筋肉のストレッチを検索して実際に試してみてください。その他の部位に対してのストレッチは今回書いておりませんので、異常を感じるようでしたら一度ご来院ください。

・下を向いたときに痛み→手の太陽小腸経、手の少陰心経、足の太陽膀胱経、足の少陰腎経

 対象ストレッチ→上腕三頭筋、三角筋、広背筋、ハムストリングス、ふくらはぎ

・上を向いたときに痛み→手の陽明大腸経、手の太陰肺経、足の陽明胃経、足の太陰脾経

 対象ストレッチ→上腕二頭筋、大胸筋、三角筋、大腿四頭筋、腸腰筋

・横に倒したときに痛み→手の少陽三焦経、手の厥陰心包経、足の少陽胆経、足の厥陰肝経

 対象ストレッチ→前腕伸筋群、三角筋、上腕三頭筋、大腿筋膜張筋、殿筋群

 *右に倒した際に痛い場合は左側の対象筋肉をストレッチしてみてください。

・振り向いたときに痛み→手の陽明大腸経、手の太陰肺経、足の陽明胃経、足の太陰脾経

 対象ストレッチ→上腕二頭筋、大胸筋、三角筋、大腿四頭筋、腸腰筋

 *右に振り向いた際に痛い場合は左側の筋肉を伸ばしてみてください。

経絡をストレッチするという場合に、鍼灸施術の1つの考え方として「上に症状がある時は、施術ポイントを下から行い、下に症状がある時は、上から施術をしていく」という考え方から、首や肩回りの場合はなるべく幹部から遠いポイントからストレッチを行っていくと良いと思います。

また、ストレッチの時間はゆっくりと30秒から1分ほど気持ち良いと感じるくらいの強度で行ってみてください。

まとめ

前回のストレッチでも挙げたように様々なストレッチがあり、どれを選ぶべきが迷うことも多々あると思います。その際は医師や理学療法士、柔道整復師、鍼灸師、トレーナー、インストラクターなどに聞いて見てください。

最後にストレッチに関係する時間ですが、どのくらい伸ばすかは様々に意見がありますが、基本的なストレッチは3,40秒間で良いと思います。しかし、最近筋膜を対象にした筋膜ストレッチというものが出てきました。これに関しては対象としている筋膜がしっかりとストレッチされるまでに2分はかかると思ってください。必然的に筋膜ストレッチはそれ以上の時間を1つのフォームにかけていくことがより効果的になるという点は付け加えさせていただきます。